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最高裁判所第二小法廷 昭和40年(オ)1156号 判決 1968年2月23日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする

理由

上告代理人本郷桂、同井上貫一の上告理由第一について。

上告人が本訴において主張する被上告人らの不法行為とはなにを指すのか、必ずしも明確ではないが、要するに、上告人が被上告人早川からその所有の本件土地を同人の代理人と称する被上告人守谷を通じて買い受け、その地上に本件建物を建築所有していたところ、その後被上告人早川から上告人に対して本件土地を売り渡したことなしとして土地所有権に基づき本件建物収去本件土地明渡を求める訴を提起され、被上告人守谷に被上告人早川のための代理権がなかつたとの理由で上告人が敗訴し、該確定判決に基づいて建物収去土地明渡の強制執行を受けたと主張して、本件土地を取得しえず本件建物を収去すべきことにより生じた損害の賠償を求める趣旨のものと解される。そして、原判決(引用の第一審判決)の確定したところによれば、上告人に対して建物収去土地明渡を命じた該判決は昭和三四年四月五日確定したものであり、また、上告人は右訴訟の係属中すでに被上告人早川と被上告人守谷との間に使用関係が存在したことを知つていたというのである。しからば、上告人としては、右判決確定の日には被上告人に対して建物収去土地明渡義務を負担したことにより自己に損害が発生したことおよび加害者がなにびとであるかを確知するにいたつたものというべく、したがつて、上告人の本訴請求が被上告人らの共同不法行為を理由とする損害賠償を求めるものであろうと、また、被上告人ら間の使用関係の存在を前提とし、被上告人守谷を加害者、被上告人早川をその使用者としてこれに対する不法行為に基づく損害賠償を求めるものであろうと、その損害賠償請求権については、おそくとも右判決確定の日から消滅時効が進行したものというべきである。それゆえ、これと同趣旨のもとに本件損害賠償請求権について消滅時効の完成を認めた原審の判断は正当であり、これに所論の違法は存しない。論旨は採用しえない。

同第二について。

原審が、所論民法七一五条による使用者責任の点にふれたのは、使用者としての被上告人早川に対する請求に関してであるから、被上告人守谷に関して原判決に理由不備の違法がある旨の論旨は、原判決を正解しない結果によるものであり、被上告人守谷に対する損害賠償請求権の消滅時効の起算点に関する原審の判断に、所論の違法は認められない。したがつて、論旨は採用するによしない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 色川幸太郎)

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